「出てこいや~!」のフレーズでも知られる元プロレスラー&総合格闘家の高田延彦さん。公開中の映画『偉大なる、しゅららぼん』やバラエティ番組など頻繁にメディアに登場しているが現在、最も力を入れているのがダイヤモンドキッズ・カレッジ(=DKC)と呼ばれる、子供たちの健全な心身の育成を目的とするボランティア・イベントだ。直近では、3月23日に東京・墨田区総合体育館にて開催。アマチュアレスリングの要素を取り入れた高田道場オリジナルの体育教室だ。そこで本誌取材班は開催に先がけて、道場を訪問。静謐な道場の中で、子どもたちに対する思いや父として、夫としての本音を探った。
強烈な眼力をいかつい肉体は一見、人に威圧感を与えるが、その中身には「人に優しく、自分に厳しく」の精神が根づいている高田延彦さんが今回、兄貴分として登場。「数百枚のハガキに80円切手を貼って夫婦喧嘩をしたことがある」という、実はおちゃめな一面を持つ“パイセン”が、子どもたちへの思いや男性の草食化、結婚願望が薄れている若い世代に喝を入れる!
子供たちに取っ組み合いを教えることで人間の土台作りの手伝いをしたい
──この高田道場は、「子どもたちの健全な心身の育成」に注力した道場ですよね。ご自身は、どんな子どもでしたか。「学校の休み時間のことと、給食に何が出るかと、放課後に何して遊ぼうかってことばっかり考えてる子どもでしたねぇ(笑)特に給食は、カレーが出ると分かるとテンションが上がってね」
──今もカレーはお好きですよね。
「いくつになってもカレーの匂いをかいで『食うか!』って段階になるとテンション上がりますよ。一方で『これは俺のカレーじゃないな』っていう、好きなカテゴリーから外れたものが出てくると、これほどガッカリすることはないですけどね。いまだに」
──トンカツがのっていればいいんでしたっけ?
「のっていればいい? そんな投げやりな言い方ないでしょ(笑)俺、実はカレーの牛ブロック肉バージョンが苦手で、豚こま肉や豚バラ肉のカレーが好きで、我が家の定番でもあるんです。ウチは息子2人を含めて男3人、カレーが大好物ですよ」
──失礼しました(笑)この道場には10歳の双子の息子さんも通っているんですよね。
「体を動かすことが好きっていうのは遺伝したみたいで、この道場以外に、サッカーもしてます。2人とも学校から帰って来ると『遊びに行っていい?』が魂の叫びですし。俺が言えたガラじゃないですけど、『いいけど、やること(宿題)をやってからな』と返します」
──道場設立はお子さんが産まれる以前の98年ですから、子どもを育てる中で道場の方針も今のスタイルになった、ということでしょうか。
「それはありますね。脳科学者の話だと人間としての土台作り(人格形成、物事を正確に判断して行動する、道徳心や理性を養う)、この世にオギャーッと生まれてから小学校5、6年生までの僅かな期間で構築完成してしまうんです。個人差はあるけど、平均的には小学校5年生と言われてます。この土台を完成させるために一番大切なことはたった3つ。運動と、仲間との触れ合い、そして自然との触れ合いの三点セットです。これらは日々積み重ねることが重要で、長期休暇のようなスペシャルな時期だけ実行すれば良いというものではないと。しかも、品物の交換じゃないんだから、この時期に3つをしてこなかったから今から(例えば16歳から)やり直そうとしても多くを取り込むことは出来ないんです。だけど今の時代は、少子化だったり中学受験を目指す子どもも増えてたり、本人が体を動かして遊ぼうとしても、仲間も時間も場所もないのが現実。土台が完成される黄金期に、体を動かして磨き上げる感性や精神的強さ、目的意識を持つ大切さを学べない子どもが増えている。これは、“運動量格差”にも繋がっているんです」
──その格差を埋めたい、と。
「本当は外遊びがベストで、近所に悪いことをしでかしたら怒る、怖いおっちゃんがいたらなお良し、なので道場でできることは限られてますけどね。週に何度かこの場所に集まって、定められたルールと信頼できる大人の下で、思い切りぶつかり合う仲間と会える環境を提供して土台作りを手伝っています」
──教えているスポーツは。
「俺イコール、プロレスラーなので勘違いされやすいんですけど(苦笑)プロレスじゃなくてオリンピック競技でもある、アマチュアレスリングや、学校体育スキル、そしてボクシングです。ただし、勝利至上主義ではなく、あくまでもテーマは遊びの延長だから、激しく楽しく。もちろん、自発的に強くなりたいという素敵な目的意識を持つ子はバックアップします。レベルには個人差がありますから強くなることだけを追い求めると、そうじゃない子が篩いにかけられて居づらくなってしまう。そういう空気・場所にさせないよう、常に目を光らせています」
──スポーツを始めると、子どもにはいい変化が起こりますか?
「我々の世代になると何をやっても変わりづらくなりますけど(笑)子どもは日進月歩ですね。ここに来る子どもって最初はほぼ100%、親に連れて来られるんですよ。多くの子どもはメディアで目にする機会が多くて、分かりやすいヒーローがいる野球やサッカーをやりたがるもの。だけど興味を持って取り組み始めると、表情や立ち居振る舞い、言葉の隅々に自信がにじみ出て来るんですよね」
息子たちが間違った道を進んだら俺から勝負を仕掛けるでしょうね
──健全な精神と肉体が育っている証ですね。ココに通った子どもたちは、草食系の大人にはならないんでしょうね、きっと。「草食系って言葉、最近よく聞きますよね。女の子とデートしてもキスしないとか、欲がなく、ザックリ言うと消極的な人のことでしょう。自分を変えるのって、自分自身の内側から沸き上がる気持ちにしかできないと俺は思ってるんで、他人が何を指南しても、薬として効き目があるかは怪しいと思いますけどね。本人が今の居心地に満足しているなら、他人が何を言っても変わろうとは考えないですよ」
──自分で決意しない限り、自分は変えられない、ということですね。
「例えば他人が、『次のデートでは女の子を絶対に、ムードのある暗闇に連れて行きなさい』と教えても、実行するワケがないでしょ(笑)恋愛なんて、己のアンテナ頼りですからね。五感を総動員して、すべてのタイミングを図りながら進めていくっていう、時には本能に任せてイチかバチかで挑んだり、人生そのものだよね」
──もし、息子さん2人が5~6年後、草食系に育っていたら?
「そうだなぁ(笑)彼らの懐に手を突っ込んで、内側から何かがグワッと変わってしまうような、強引な風を起こすでしょうね。俺自身も相当なエネルギーを必要とするでしょうけど、こっちから勝負を仕掛けます。例えば、ニコニコ笑いながら『旅行に行こうよ』と誘って、発展途上国に連れて行って、一緒にかなりワイルドな旅をするとか(笑)人生観に強い刺激を与える体験をさせるでしょうね」
──さすが子煩悩だけあって、自らぶつかるわけですね。ご家庭では、洗濯など家事も手伝いますよね。
「奥さんが留守の時に大量の洗濯物を見て、このぐらいのことは率先してやらねばいかんな、と分かって最近、始めたんです。お水を増やすボタンとか、低温乾燥の方法も教えてもらいました。あの、洗濯物が乾いて片付いていく気持ちよさ、最高ですね(笑)でも、後は食べ終わった食器をシンクに運んで水に浸けるぐらいですよ」
──そうやってお互いに歩み寄ることが、夫婦生活円満の秘訣ですか。
「剣道の間合いを取るように、そしてお互いを尊重し合いながら、自制を忘れず、時には主張し合うことが大切です。それを続け相手を怒らせない危険区域を知るには10年かかりますけど(笑)それを乗り越えてこそ、兄妹であり同志であり、親友でありライバルであるという、かけがえのない存在になっていくんです」
──ほかにパートナーと円満な関係を築く秘訣はありますか?
「男7対女3か、男6対女4の割合で、男性側が譲歩することでしょうか。女性が強いほうが家庭円満というのは事実ですよ(笑)」
──その女性の強さが嫌で結婚したくない、という男性もいますが。
「俺自身は結婚して良かったですけどね。たった1日でも泊まりのロケに出ると、早く奥さんのメシが食べたくなりますし、一緒に映画も観たいなんて考えたり、当然、子どもたちの顔も見たくなるから、早く家に戻りたくなりますし。たった1日でもですよ。それって結婚しなければ味わえない感覚だから、若い人たちには結婚に対して、希望や夢は捨てないでほしいですね」
撮影中、取材した男性スタッフの脇毛が濃い事実を発見し、「おー男らしいなあ(笑)処理したほうがいいよ!」
と、道場内を大爆笑の渦に巻き込んだ高田さん。笑っている写真は、まさにその時の笑顔です。“子ども磨き”に勤しむアニキの登場を、またお待ちしております!
INFORMATION
『ダイヤモンド・キッズ・カレッジ』
INFO
一般的な体操教室と違い、アマチュアレスリングの要素を取り入れたオリジナルの体育教室。子どもたちの心と身体を磨く場所として、高田道場が主催し、全国各地で行っている。
会場/墨田区総合体育館(東京)
開催日/3月23日(日)午前、午後の部の2回
内容/高田道場オリジナルの体操教室。マット運動を中心に身体を動かすことの楽しさを子どもたちに知ってもらえるよう楽しく、厳しく指導する。
参加対象/小学1年生から6年生の男女(参加費は無料)参加人数に限りはあるが、満員の場合でも見学は可能
公式HP
PROFILE
高田延彦(たかだ・のぶひこ)
1962年4月12日生まれ 神奈川県出身
80年3月にプロレス入門、81年デビュー。02年11月24日、東京ドームの「PRIDE.23」で現役を退いた。現在はタレント活動を中心に、ライフワークとして全国の小学生を対象にしたボランティアイベント「ダイヤモンド・キッズ・カレッジ」の開催に力を注ぐ。東京、福岡、湘南、横浜に展開中の高田道場代表。双子の男の子の父親でもある。出演映画「偉大なる、しゅららぼん」は3月8日から公開中。
公式HP
公式Twitter
『ダイヤモンド・キッズ・カレッジ』
INFO
一般的な体操教室と違い、アマチュアレスリングの要素を取り入れたオリジナルの体育教室。子どもたちの心と身体を磨く場所として、高田道場が主催し、全国各地で行っている。
会場/墨田区総合体育館(東京)
開催日/3月23日(日)午前、午後の部の2回
内容/高田道場オリジナルの体操教室。マット運動を中心に身体を動かすことの楽しさを子どもたちに知ってもらえるよう楽しく、厳しく指導する。
参加対象/小学1年生から6年生の男女(参加費は無料)参加人数に限りはあるが、満員の場合でも見学は可能
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PROFILE
高田延彦(たかだ・のぶひこ)
1962年4月12日生まれ 神奈川県出身
80年3月にプロレス入門、81年デビュー。02年11月24日、東京ドームの「PRIDE.23」で現役を退いた。現在はタレント活動を中心に、ライフワークとして全国の小学生を対象にしたボランティアイベント「ダイヤモンド・キッズ・カレッジ」の開催に力を注ぐ。東京、福岡、湘南、横浜に展開中の高田道場代表。双子の男の子の父親でもある。出演映画「偉大なる、しゅららぼん」は3月8日から公開中。
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Interview&Text/内埜さくら Photo/TATSURO