「新宿スワン」を皮切りに映画界の鬼才・園子温監督作品への出演が続き、NHK連続テレビ小説「花子とアン」でも話題を呼んだ冨手麻妙さんが、園監督がメガホンを執り「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の一環で制作された『アンチポルノ』で映画初主演を果たした。実は小誌登場のたびに「女優として園子温監督の映画で脱ぎたい」と語っていた彼女の有言実行する役者魂と夢を叶える秘訣にも迫る!!
園子温監督作でヌードになる
決意には経緯があるんです!
──以前、ご登場頂いた際に聞いた「女優として園子温監督の映画で脱ぎたい」という言葉を有言実行しましたね!「イベント終わりの監督を1人で出待ちして、そう訴えた願いがやっと叶ったと知らない人は、単なる脱ぎたがりだと勘違いしているかもしれませんけど(笑)海外では“女優は脱いでナンボ”という風潮があって、園監督も私も同意見なのに、日本では落ちぶれたように受け取られてしまう。だから監督はクランクイン前、父親のように私個人の人生まで心配してくれたんです。『本当に大丈夫か?親御さんは心配しないか?』と」
──周囲も大反対だったとか。
「大人達の批判はすごかったですね。『日活ロマンポルノで脱ぐって、女優としてどうなの』という意見に監督も私も悔しい思いをしたからこそ、悔しさと怒りが京子の台詞に込められているんです。『男の人達が作った世界で女を消費している』という台詞も劇中にあります。園監督は『エロ目的で脱がせたくない』という思いも強くて、この作品で脱ぐ女優は全員、誰かに脱がされる描写がないんです。みんな、自分で脱いでいます」
──ヌードシーンはもちろん、全体的に絵が美しかったです。
「監督の性別は男ですけど女性的な部分も多々内包している方なので、アートみたいですよね。京子が住む部屋の色使いは男性的ですけど、監督が1日で仕上げた何枚もの絵は女性らしさがあると思います。この映画は女性に支持されていて、マカオ国際映画祭で観た時、若い女の人が純粋に楽しんでいるのを見てうれしかったです。でも実は…この映画、ロマンポルノらしくないんですよね。試写会を観た母が『今までとまったく違うロマンポルノを作ろうとしたなら、大成功だね』と言ってました」
──冨手さんの“大好物”である、血を扱うシーンも印象的でした。
「あのシーンはアイアンメイデンという拷問器具を作った伝説を持つ、エリザベート・バートリへのオマージュだそうです。個人的にはもっと大量の血液を望みたいですけどね(笑)」
ラストは観る人の受け取り方
次第だし分からなくてもいい
──演じる際の苦労は?「脚本は、監督が私が演じる前提で書いた当て書きで『自分の気持ちそのまま』の台詞ばかりなので、リハで事前に作り上げた京子を本番で演じたら、園監督に壊されて死ぬほど大変でした(笑)『リハーサルと同じことをやるんじゃねーよ!』と怒鳴られて。そう言われたらやるしかないんですけどね。ただ今回の作品で、役者はドMじゃないとダメだ、と実感したんです。取材で『こんなに大変だった』と言いたいがために、辛い現場に耐えているんじゃないかと思ったので」
──なるほど。ただ失礼ながらラストは現実か夢なのか記者には把握できませんでした…。
「ラストはどちらに受け取ってもいいですし、分からなくてもいいと思います。私自身も監督を信じて分からないながらに演じましたし、京子自身も理解していないはずですから。その浮遊感を楽しんで下さい」
──初主演映画ですが、ご自身の中でどんな位置づけになりますか。
「私の人生を変えた、今より上にいくためのスタートとなる作品です。とは言っても結果を出さなければ、次に園監督と組めなくなるので、プレッシャーも、もちろんあります」
──園子温監督のほかに前回は三浦大輔監督作品にも出たいと言っていましたが、それも実現しましたね。
「ずっと“タラレバ”の人生で後悔ばかりしてきたから、当たって砕けろの精神に切り替えたことが功を奏しているのかもしれません。次は三浦監督の作品で主演を演じたいです。でもその前に、心底リスペクトしている園子温監督を『海外の映画祭に連れて行ってあげたい』という気持ちが今は大きいですね」
INFORMATION
■映画『アンチポルノ』 INFO&STORY
小説家兼アーティストとして時代の寵児となった京子(冨手麻妙)。極彩色の部屋に籠もり、マネージャー典子(筒井真理子)が伝えるスケジュールを分刻みでこなす毎日。現実と虚構、サディズムとマゾヒズム、自由と不寛容、カリスマと奴隷…寝ても覚めても終わらない悪夢。私は京子なのか?京子を演じているのか?虚構と現実の狭間で、京子の過去が暴かれていく一。日活ロマンポルノ生誕45周年を記念して製作された「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1作で、園子温監督が脚本を書き下ろした完全オリジナルの最新作でもある。
CAST&STAFF
出演/冨手麻妙・筒井真理子
監督・脚本/園子温 企画製作・配給/日活
公式HP
1月28日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(C)2016 日活
PROFILE
冨手麻妙(とみて・あみ)
1994年3月17日生まれ 神奈川県出身
アイドルグループ研究生としての活動を経て、女優に転身。映画やドラマ、舞台などで活躍。近年の出演作に映画「新宿スワン」「リアル鬼ごっこ」「闇金ドックス」「みんな!エスパーだよ!」「女子高」「何者」など。公開待機策に「蠱毒~ミートボールマシン~」がある。写真集「裸身_初号」(撮影/沢渡朔)発売中。
公式ブログ
公式Twitter
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小説家兼アーティストとして時代の寵児となった京子(冨手麻妙)。極彩色の部屋に籠もり、マネージャー典子(筒井真理子)が伝えるスケジュールを分刻みでこなす毎日。現実と虚構、サディズムとマゾヒズム、自由と不寛容、カリスマと奴隷…寝ても覚めても終わらない悪夢。私は京子なのか?京子を演じているのか?虚構と現実の狭間で、京子の過去が暴かれていく一。日活ロマンポルノ生誕45周年を記念して製作された「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1作で、園子温監督が脚本を書き下ろした完全オリジナルの最新作でもある。
CAST&STAFF
出演/冨手麻妙・筒井真理子
監督・脚本/園子温 企画製作・配給/日活
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1月28日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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PROFILE
冨手麻妙(とみて・あみ)
1994年3月17日生まれ 神奈川県出身
アイドルグループ研究生としての活動を経て、女優に転身。映画やドラマ、舞台などで活躍。近年の出演作に映画「新宿スワン」「リアル鬼ごっこ」「闇金ドックス」「みんな!エスパーだよ!」「女子高」「何者」など。公開待機策に「蠱毒~ミートボールマシン~」がある。写真集「裸身_初号」(撮影/沢渡朔)発売中。
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撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら