怪奇!YesどんぐりRPGとしても活動するピン芸人サツマカワRPGさんが「R-1グランプリ」ラストイヤーに挑む――。自信のないコメントを残すも『自分らしく一番面白いと思うことをぶつけます』と意気込みを語ってくれた。そんなサツマカワさんに前回のR-1の反響から学生時代の話、トリオ結成について、アルバイトでの強&弱エピソード、そして真空ジェシカ川北さんとの〝深イイ話〟まで聞いてきました。
『自分のお笑いは極狭で自信はないけど面白いと思ったら応援してください』
『優勝できるか問題』はありますが一本ネタを作って果敢に挑みます──「R-1グランプリ2023」参戦を表明されました。
「芸歴10年目のラストイヤーなので、絶対に優勝したい!したいんですけど、好きな人は好きという芸風で『優勝できるか問題』はあるんですけど。〝チャーフィン〟とか日本国民全員が面白いと思うネタではないので。吉住が優勝するのでは、と踏んでます」
──吉住さんですか?いやいや…。開催会見はどうでしたか。
「純粋なピン芸人が僕とYes!アキト、ソマオ・ミートボールの3人しかいなくて。ただ会見は楽しかったですね、お祭りの始まりだって感じで」
──1回戦が12月26日からで大会近いですけど?
「たまたまかも分からないですが、僕のコントのセリフで『大会近いもんな』というのがあって」
──観てます(笑)R-1ラストイヤーの意気込みを。
「ショートコントをメインにやっているんですが前回、3分の1本コントで臨んだら初めて決勝に行くことができた。なので今回も普段とは違うものを頑張って作る…。果敢に挑もうと思います」
──『放課後』というネタで、〝そっか〟が耳に残りました。
「そこに着目しないんですよね。あのネタは『そっか、大会近いもんな』で『そっか』だけで言わないんです。言うかどうか判断する時間があったら、練習したほうがいいですね」
──ただ、ツイッターに記載が。
「確かに。〝そっか〟とだけ呟いて、1000以上のいいねをもらいました」
──初決勝での反響は。
「R-1はお笑い大好きな人しか観てないイメージがあったんですが多くの方に声を掛けてもらいました。出身中学で夢について話す講演会に呼んで頂いたり、地元のお祭りのイベントMCをやらせてもらったり。ファイナリストになったから入ったお仕事なので有り難いですね」
──少し時系列でのお話を。大学生の時から活動されて。
「芸人活動の開始は生まれた瞬間に、へその緒が面白く絡まっていてそこではあるんですよね。お母さんも笑ってくれていたらしく記憶はないんですけど記録には残っているので。小中高は飛ばして、何もやってないです、勉強してました」
──大学2年生の時に学生お笑いの大会「笑樂祭」で準優勝。当時からお一人で?
「お笑いサークルでのデビューライブがあって新入生同士でコンビを組むんですけど高校の時に一発ギャグでクラスを沸かしていたので初舞台はその時のギャグをやろうとピンでエントリーしたんです。最初のライブが終わりコンビを組もうかなと思ったら、ほかはみんなコンビになっていて僕だけ取り残されてしまい…」
──就職活動もされたと聞きました。卒業後については。
「養成所を経て4年生でプロの芸人として活動を始め、大学卒業のタイミングで事務所を離れることになったので就活をしてみたんです。なぜしたかというと芸人って将来、食えるかどうか分からないじゃないですか。食えないとなった時は職を探すことになる。自分が就職活動できる人間なのか早めに知っておきたかったんです。早い段階で食品会社から内定を頂き、就活したら内定をもらえる人間なのかと安心してもう少し続けても大丈夫だとお断りして芸人一本に決めました」
俺と真空ジェシカ川北との関係がいい話として半バズりしてました
──就活の〝練習〟を合格されて、芸人の道を真っすぐに。
「当時、学生芸人としてブログをやっていて最後に『芸人を辞めます。就職活動します』と書いたんです。たくさんコメントがきた中に一件、こんな記述があったんです。『辞めるなんて俺は信じない。節目節目で俺とお前は電話してたよな。芸人辞める件に関して電話してないから俺の中ではまだお前は芸人だからな』(投稿者/島田紳助)と書いてあるのが。節目ごとに連絡するヤツって1人しかいない、真空ジェシカの川北なんですよ。照れ隠しで違う名前にして会った時に確認したらだいぶ間をおいてから軽く頷いてました。それをファンの人が見つけたらしく、ツイッターに今のエピソードが書かれていて、いい話みたいに半バズりしてました」
──いい話です。ご両親の反対などはなかったですか。
「単独ライブを観に来てくれたり応援してくれてます。怪奇!YesどんぐりRPGの単独ライブで3人のお母さんを山梨と北海道と茨城から東京に集結させて俺らの衣装を着てもらって『ムール貝』のネタをやってもらったんです。めちゃめちゃウケました。『怪奇!の生みの親ともいえる方々に来てもらいました』と呼び込んで本物の生みの親が出てきて大ウケ。楽しかったですね。それぐらい親とは仲がいいです」
──昔と今で芸風に違いは?
「核の部分は変わらず出し方は大幅に変化しました。最初はダラダラ出てきて小さい声でボソボソとしゃべって。そっちのほうがカッコいい、センスがある気がしていて。ある時、限界を感じました。先輩とかが面白がってくれない、可愛くないんですよ。それに気づき大声を出すことを意識したら面白がってもらえるようになりました。この間までトガってたヤツが急に『お願いします――!』は怖いと言われることはありましたけど。笑ってほしくてやってるんですよ、もちろん。人間、大きな声のほうがいいですよね。ボソボソ不愛想な人よりは気持ちいいですよね」
──サツマカワさんはピン芸人以外でもご活躍で。
「15年にM-1が復活して芸人にとってM-1グランプリは大きな存在でユニット参加もOKだったので出場を決めました。僕がお笑い大好き少年だった中高生の時に観た椿鬼奴さん、キートンさん、くまだまさしさんたちの6人組ユニット・キュートンが大好きでめちゃめちゃ面白かったんです。ユニット内でコンビを組んでM-1に出たりしてて、あまり言ってないんですけど怪奇!はキュートンを目指しているんです!」
──Yes!アキトさん、どんぐりたけしさんを誘ってトリオ結成。
「それぞれギャグ芸人として活動していた2人の面白さに気づいて俺から誘いました。『M-1に出ようよ!キュートンさんみたいになろうぜ』と。18年に初めて出て3回戦までいって顔と名前を覚えてもらいました」
──ちなみに誰かとコンビを組もうと考えたことはありますか。
「だいぶ前ですけどコンビでやったほうがいいのかなと思う時期があって。僕はお酒が飲めないし、結構コミュ障なので交渉や折衝を担当してくれる相方と組んだほうがいいのかなって。ダイヤモンドというコンビの野澤さんがお笑いサークルの時の先輩で僕が1年生の時の4年生。野澤さんが一番面白いと思っていてガチでコンビを組むかという話が出たこともありました。あまりライブには出てなかったですけど。ママタルト大鶴肥満は後輩で川北は別の大学のサークルですね」
『さんまのお笑い向上委員会のモニター横で認知してもらえるようになった』
ネタ番組『バナナマンの爆笑ドラゴン』合格は自信がつきました!──小誌が求人誌なのでバイトの話もいいですか。
「17年ぐらいまでやってて一番長いのは居酒屋のキッチン。バイトし始めの頃はそこで夜10時から深夜3時まで働いて、夜中の3時半から朝8時までコンビニで夜勤という生活をしてました。『はい、喜んで!』系の居酒屋だったのでコンビニで品出ししてたらお客さんに『レジをお願いします』と言われ『はい、喜んで!』と言っちゃいました。弱エピソードですけど(笑)」
──芸人の稼ぎで飯が食えるようになったのは?
「怪奇!を組む少し前『さんまのお笑い向上委員会』のモニター横にお見送り芸人しんいちさんと一緒に行かせてもらっていた時期があってお笑いファンの人に認知してもらえて、それでライブに呼んで頂いてライブ収入でギリギリ生活できた感じですかね。向上委員会がきっかけかもしれないです。あと一番最初に自信がついたのが『バナナマンの爆笑ドラゴン』というNHKのネタ番組で漫才とコントの2つの軍に分かれて戦うんです。俺が出た時はバイきんぐさん、アンガールズさんが200組ぐらいの若手のネタ動画を見て2組ずつ自分の軍に入れる。通過するのが200分の4だから爆笑ドラゴンのオーディションに受かるなんて不可能と芸人仲間の間では言われていた中、アンガールズさんにピックアップしてもらえてテレビで初めてネタをやったんです。その時に受かったのが俺とすゑひろがりずさん、別の軍がAマッソさん、あと全力じじぃさんだ。改名したTOKYO COOLさん。2人は40歳超えてるのに若手で出てきて通るから、みんなやめてくれよって言ってました」
──「R-1グランプリ2023」への意気込みと…。
「アルバイトの話でひとつ思い出しました。最後にやっていたバイトが水道メーターを見る検針の仕事で、メーターを確認して数字を打ち込んで検針票をポストに投函するんです。ルートと年間で日程が決まっていて担当のお宅にテレビでも取り上げられる有名なゴミ屋敷があったんです。最初に訪問した時は2階建てと同じぐらいの高さのゴミがあって作業して紙をポストに入れようとしたら住人の方が出てきて真っ黒のドレスを着た80歳ぐらいのキレイなおばあさんだったです。『おはようございます。水道メーターの方ですか。おつかれさまでございます』と物腰も柔らかくて。その2か月後に行ったらゴミがすべて取り除かれていて驚きながらも作業をしてたらまた住人の方が出てきて、それが真っ黒の服を着た20歳ぐらいのめちゃめちゃキレイなお姉さんだったんです。60年ぐらい時が戻ったの?って、という話で今思うと怖いですよね」
──ナイスエピソードです。改めて「R-1グランプリ2023」への意気込みと今後の抱負を。
「自分のやってるお笑いは極狭だと思っているので優勝できる自信は到底ないんですが、それでも自分らしくラストイヤーらしく一番面白いと思うことをぶつけることができれば。頑張りますので面白いと思ったら応援お願いします。これからも自分が面白いと思うことをやり続けます」
──M-1はまだ。
「M-1はあと100回ぐらい出ます。結成15年以内なのでマジであと10回は出られます」
──昨年のR-1ではサンドウィッチマンの伊達さんから高い評価を頂いたそうで。
「メディアで『サツマカワが一番面白かった』と言ってくださって直接お会いした時に御礼を伝えました。伊達さんは優勝したお見送り芸人しんいちさんの直の先輩なんですが、しんいちさんじゃなく俺を褒めるというボケもありつつホントに面白いと思ってくれたみたいでうれしかったです」
INFORMATION
サツマカワRPG(さつまかわあーるぴーじー)
1991年1月26日生まれ 山梨県甲府市出身
本名は薩川凜(さつかわ・りん)。明治大学お笑いサークル木曜会Z出身で12年、大学4年時にデビュー。現在はケイダッシュステージに所属。普段はピンで活動しているが、どんぐりたけしさん、Yes!アキトさんとのトリオ怪奇!YesどんぐりRPGとしても活動。「M-1グランプリ2022」では準々決勝に進んだ。前回の「R-1グランプリ」で初の決勝進出を果たし、5位に終わるが高い評価を得て、ラストイヤーとなる「R-1グランプリ2023」に参戦。YouTube「怪奇!YesどんぐりRPG」のチャンネル登録者数は約11万人を誇る。
公式Twitter
怪奇!YesどんぐりRPG
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サツマカワRPG(さつまかわあーるぴーじー)
1991年1月26日生まれ 山梨県甲府市出身
本名は薩川凜(さつかわ・りん)。明治大学お笑いサークル木曜会Z出身で12年、大学4年時にデビュー。現在はケイダッシュステージに所属。普段はピンで活動しているが、どんぐりたけしさん、Yes!アキトさんとのトリオ怪奇!YesどんぐりRPGとしても活動。「M-1グランプリ2022」では準々決勝に進んだ。前回の「R-1グランプリ」で初の決勝進出を果たし、5位に終わるが高い評価を得て、ラストイヤーとなる「R-1グランプリ2023」に参戦。YouTube「怪奇!YesどんぐりRPG」のチャンネル登録者数は約11万人を誇る。
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Interview&Text/立花みこと Photo/渋谷和花