看取り士――本人や家族が、旅立ちを意識した時から納棺の前までを支援する職業。尊厳が守られ自然で幸せな最期を迎えるために、旅立つ方の「心」「魂」に寄り添う者のこと。現段階では認知度が低い職業だが9月13日に公開される映画『みとりし』で全貌が明らかになる…。ベテラン俳優の榎木孝明さんとの共演でヒロイン役を務めた村上穂乃佳さんが、看取り士という仕事の真実や魅力を語る。
看取り士がする最期のポーズ知って頂きたいし実践したい
──新人看取り士の高村みのり役を演じてみて、いがかでしたか。「みのりは9歳の時に母を亡くした過去をまだ受け入れられないながらも看取り士という職業に就いたんですけど、私と環境が似ているコだな、と思いました。逆ではありますが私は父がいなくて、母が弟と私を育ててくれたので。みのりは新人で、私もこれからお芝居の経験を積んでいく、というところも共通点でした。だから、みのりが榎木(孝明)さん演じる先輩・柴(久生)さんの力を借りずに1人で看取った後、『ちゃんとやれていたでしょうか』という台詞は、すごく自分にもマッチしていたと感じます」
──撮影前にご自身が身内の死に直面した経験はありましたか。
「中学生の頃、地元の愛媛に住んでいる母方の祖父が亡くなったんです。私が小学校2年生の時に上京してからは年に一度ぐらいしか会えていなかったんですけど、近くに住んでいた当時はよくドライブに連れて行ってくれました。私の仕事を一番応援してくれていたのも祖父なんです。でも、最期は一緒にいることができなくて…。みのりが石濱(朗)さんが演じた東條(勝治)さんを看取るシーンがあるんですが、おじいちゃんを看取る時はこんな感じなのかな、と思いつつ、祖父と一緒にいられなかった悔しさも再燃しました。ただ、旅立つ方の『心』と『魂』に寄り添うことができる看取り士は、素晴らしい職業だということも味わいました」
──見送る直前に取る、独特のポーズも印象的でした。
「旅立つ方の背中に腕を当てて、手を握るポーズですよね。撮影前に研修を受けたんですが、看取り士としてマストのポーズだそうです。背中が体温や鼓動を最後まで感じられる場所らしいんです。私もいつか実践しようと思いますし、映画をご覧になった方々もぜひ、知識として持って頂ければ」
──劇中では、みのりが遺族から財産目当てだと罵倒される、切ないシーンがありました。
「実話だそうです。看取り士は介護士や看護師ではなく、民間資格なので、勘違いされやすいんでしょうね」
看取り士という職業を知って頂ける全世代向けの映画です
──ロケ地の岡山はいかがでしたか。「私は田んぼや森、川に囲まれた田舎で育ったんですが、同じような風景を見ることができて思い出の地になりました。東京に来て15年以上経ちますけど、いまだに愛媛が恋しくなることがあって。自然に囲まれる場所へ週1で行きたいんです」
──その岡山の風景を、ご自身のカメラに収めてきましたか?
「よくご存知ですね(笑)フィルムカメラで風景ばかり撮ってきました。前はデジタルを使っていたんですけど、フルオートがつまらないなと感じて、すべて自分で調整するフィルムカメラに憧れて買ったんです。デジタルとは違って現像が終わるまで完成写真を見ることができないので、ワクワク感を楽しんでいます」
──最後に本作のPRを。
「看取り士という職業自体がまだあまり知られていないので、この作品で職業の内容と重要性を伝えていきたいです。死はいつか必ず訪れるものなので、映画をご覧になったら自分や家族の最期について考える機会にもなると思います。私自身は旅立つ時、誰も側にいなくて1人だったらどうしよう。誰かに見守られながら最期の時を迎えたいと実感しました。明るい未来を信じている中高生には現実を伝えたいですし、介護や孤独死といった現代のテーマも扱っているので、すべての世代の方にご覧頂きたいです」
INFORMATION
■映画『みとりし』
INFO&STORY
定年間際のビジネスマン柴久生(榎木孝明)は交通事故で娘を亡くし、自殺を図ろうとしていた。そんな彼の耳に聞こえた「生きろ」の声。その声は柴の友人・川島の最期の時の声だと、川島の看取り士だった女性から聞かされる。それから5年後、岡山・備中高梁で看取り士としてのセカンドライフを送る柴は、9歳の時に母を亡くした新人・高村みのり(村上穂乃佳)たちとともに、最期の時を迎える人びとを温かく支えていく。一般社団法人「日本看取り士会」の代表理事を務める柴田久美子さんの経験を原案に、温かい死を迎えるために、本人の希望する形で旅立つ人の心に寄り添いながら見届ける看取り士を描いた。
CAST&STAFF
出演/榎木孝明・村上穂乃佳・高崎翔太・斉藤暁・大方斐紗子・堀田眞三・片桐夕子・石濱朗・つみきみほ・金山一彦・宇梶剛士・櫻井淳子ら
原案/『私は、看取り士。』柴田久美子著(佼成出版社刊) 監督・脚本/白羽弥仁
配給/アイエス・フィールド
9月13日(金)より有楽町スバル座ほか全国順次公開中
公式HP
(C)2019「みとりし」製作委員会
PROFILE
村上穂乃佳(むらかみ・ほのか)
1995年7月5日生まれ 愛媛県出身
女優として映画やドラマ、舞台、CMなどで活躍。近年の映画出演には『SCOOP!』『三尺魂』『ハモニカ太陽』『いつまでも忘れないよ』などがある。連続10秒ドラマ「愛の停止線」がYouTube公式チャンネルで公開中。
公式Twitter
公式Instagram
■映画『みとりし』
INFO&STORY
定年間際のビジネスマン柴久生(榎木孝明)は交通事故で娘を亡くし、自殺を図ろうとしていた。そんな彼の耳に聞こえた「生きろ」の声。その声は柴の友人・川島の最期の時の声だと、川島の看取り士だった女性から聞かされる。それから5年後、岡山・備中高梁で看取り士としてのセカンドライフを送る柴は、9歳の時に母を亡くした新人・高村みのり(村上穂乃佳)たちとともに、最期の時を迎える人びとを温かく支えていく。一般社団法人「日本看取り士会」の代表理事を務める柴田久美子さんの経験を原案に、温かい死を迎えるために、本人の希望する形で旅立つ人の心に寄り添いながら見届ける看取り士を描いた。
CAST&STAFF
出演/榎木孝明・村上穂乃佳・高崎翔太・斉藤暁・大方斐紗子・堀田眞三・片桐夕子・石濱朗・つみきみほ・金山一彦・宇梶剛士・櫻井淳子ら
原案/『私は、看取り士。』柴田久美子著(佼成出版社刊) 監督・脚本/白羽弥仁
配給/アイエス・フィールド
9月13日(金)より有楽町スバル座ほか全国順次公開中
公式HP
(C)2019「みとりし」製作委員会
PROFILE
村上穂乃佳(むらかみ・ほのか)
1995年7月5日生まれ 愛媛県出身
女優として映画やドラマ、舞台、CMなどで活躍。近年の映画出演には『SCOOP!』『三尺魂』『ハモニカ太陽』『いつまでも忘れないよ』などがある。連続10秒ドラマ「愛の停止線」がYouTube公式チャンネルで公開中。
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撮影◎おおえき寿一 取材・文◎内埜さくら
ヘアメイク・スタイリスト◎久保田延彦
ヘアメイク・スタイリスト◎久保田延彦