ミュージシャン／ＤＪ……のはずが、コンビニ食材を組み合わせて新料理を創作する「コンビニかけ合わせグルメ」がネットで大反響。ラジオ、テレビ出演のみならず書籍発売も成し遂げたディスク百合おんさん。ナードコアという自身が取り組む音楽と、コンビニかけ合わせグルメ。まったく別物に見える２つの活動にどんな共通項があるのだろうか。

ナード(オタク)でコアな音楽家にして「コンビニかけ合わせグルメ」の人！

──小さな頃から音楽好きでしたか？
「母親が新星堂でバイトをしてたので、よくＣＤを買ってくれたんですよ。筋肉少女帯とか電気グルーヴとか、あまり同級生が聴いていないものを聴いていましたね。当時は『ファンロード』というオタク向けの雑誌で、筋肉少女帯のライブレポとかも読んでいて、大槻ケンヂさんのエッセイも読むようになりました」

──サブカル少年だったわけですね。
「サブカルかっこいい！みたいに思ってましたね。『Quick Japan』も読んでいて、そこで今やっているナードコアっていう音楽にも出会ったんです」

──どんな音楽なんでしょうか？
「ダンスミュージックにサンプリングした音を入れるんですけど、そのネタが特撮やアニメ、テレビネタだったりするのが特徴で。だからナード（オタクの意味）って名前なんです。当時は渋谷や原宿のいかついレコード店や、個性的な服屋にしかそのＣＤが置いてなくて、１人で行くのは怖かったから、お母さんと一緒に買いに行ってました（笑）」

──余計目立ったと思います（笑）。いつから作品を手掛けるようになったんですか？
「高校時代ですね。パソコンで曲作りを始めて、同じ趣味の人と交流も。それで先輩方の前でライブをしたんですけど、人生稀に見る大滑りをしまして（笑）。ステージで曲を流してパフォーマンスをしようとしたんですけど、小道具を出してみて、やっぱり引っ込めての繰り返しで『ちゃんとやれ！』と怒られました。あと自分のホームページもクラスメイトにバレて、『悪いのは全部俺』と書き残して閉鎖しました（笑）。いろいろ挫折して、『僕には向いてない』と音楽は一度辞めちゃったんです」

──その後はお笑い芸人もしてたそうで。
「大学でお笑いサークルに入っていたので、そっちにシフトしていきました。〝オタク芸人〟と名乗って、抱き枕と一緒にネタをしたり、パソコンと会話するネタをやったりしていました」

──そっちはそっちで、また途中で諦めたわけですか。
「そうですね。その頃読んだサンドウィッチマンさんのインタビューに『10年先を見据えて活動したほうがいい』という話があったんですけど、10年後の自分が全く見えなくて（笑）。そんな時期に、また知り合いの音楽イベントに誘われるようになり、もう一度音楽活動を再開しました」

──百合おんさんの曲で「ディィィジェェェケオリィィィ」とフレーズをループさせるやつ、超面白かったです。
「あれが代表作なんですよ。ＤＪ　ＫＡＯＲＩさんのフレーズをサンプリングして、ＧＡＢＢＡっていう物凄い速い曲と混ぜた『ﾃﾞｨｨｨｼﾞｪｪｪｹｵﾘｨｨｨｽﾞｶﾞｧｧｧﾊﾞｧｧｧ』って曲で」

──あと「車にポピー」ってＣＭの言葉をループさせた曲もウケました。
「最近は『ケンちゃんラーメン新発売』というフレーズをずっとループさせて、グルーヴを出す曲も作りました。みんなが手を出さない『あ、こんなフレーズ流行ってたよね』というネタを使って、人の記憶を無理やり引きずり出すような曲が好きなんですよ」

──今や百合おんさんはコンビニの食材を組み合わせて料理を創作する『コンビニかけ合わせグルメ』で有名ですけど、みんなが知ってるものを組み合わせて発表するのは、音楽活動と似ていますよね。
「似てますね。昔から『ＯＨ！ＭＹコンブ』が好きで、高校時代に作ったホームページでもレシピを再現の企画をやっていましたし、何かと何かを混ぜて新しいものを作るのが楽しいんだと思います」

──『コンビニかけ合わせグルメ』を入口に、音楽に興味を持つ方もいますか？
「ありがたいことに、そういう方もいますね。ただ、コンビニかけ合わせでラジオとかに出るときは普通ですけど、ライブでは野球のユニフォームを着て発狂に近いパフォーマンスをするので、面食らう方も多いと思います（笑）」

──『コンビニかけ合わせグルメ』で有名になり、新しいかけ合わせをたくさん考えるのも大変なのではないでしょうか。
「コンビニの新作のサイクルが早いお蔭で今のところは大丈夫ですね。ただ確かに平日は普通に働いているので、活動が何本柱なんだって状況で」

──芸人時代は10年先が見えなかったと話してましたが、今はどうですか？
「そう言われると見えてない気もしますけど……（笑）。でも、たぶん10年後も同じような活動をやっていけそうだなと思ってます。好きなことをずっと続けられそうなことは嬉しいですよね」